アウトオブボックス方式のネットワーク接続がIoTデバイスにとって重要な理由

その理由は、IoTネットワークが非常に複雑で、デバイスをネットワークに接続するのに全てのケースにあてはまる共通の方法がないからです。これは、携帯電話をモバイルネットワークに接続する場合とは大きく異なります。基本的にIoTデバイスが携帯電話と異なる点は3つあります。デバイスを製造するOEMの数がはるかに多いこと、用途が1つではなく数百に上ること、そしてエンドポイントデバイスには様々な半導体ベンダーのチップが使われていることです。

膨大な数のケースそれぞれに異なる対応をするという方法は、マスマーケット向けの低価格デバイスには向いていません。(e)SIMのような従来のネットワーク接続管理手法は、大量のデバイスを展開する場合はコストが高過ぎ、設定機能が限定されている上にバッテリの電力消費も大き過ぎます。

IoTデバイスをアウトオブボックス(out-of-the-box)方式でネットワークに接続可能にする方法の1つが、SIM機能を物理的なSIMカードから直接チップセットへ移動することです。この方法は、アセットトラッカーやスマートモーションセンサー、スマート温度センサーのような、寿命の長いモバイルIoTアプリケーション用の低価格デバイスに特に適しています。組込みSIMならば、コスト効率の良い実装を行うのに最小限のハードウェアとソフトウェアフットプリントが提供され、最小限の消費電力で実現することができます。また、IoTのバリューチェーン全体で簡素化を図り、コストと時間を節約できます。

この方式は、デバイスメーカにとっても多くの利点があります。まず、従来よりパッケージサイズが小さくバッテリ寿命が長いので、より汎用性の高い設計オプションを選ぶことができます。さらに、SIMを調達する必要がなく、IoTサービスプロバイダは簡単なデジタルプロセスを使用して、使用者の認証情報をデバイス製造時に実装することができます。

この認証情報のデジタルプロビジョニングは、信頼の基点（Root of Trust）に基づくものです。これはIoTネットワークにおけるデバイスのIDの根幹をなすもので、ユーザの介在なしに有効化できるので、「ゼロタッチプロビジョニング」とも呼ばれます。さらに、LoRaWAN、長距離Wi-Fi、BLE（Bluetooth Low Energy）などの接続方式向けの非セルラー方式ネットワーク認証情報の自動プロビジョニングにも同じRoTを使用できます。

RoTは、ネットワーク認証情報を確認するだけでなく、デバイスのライフサイクル全体を通じてネットワーク上での安全性を確保するための基盤としても不可欠です。認証情報は、デバイスの展開時から使用中、そしてEOLに至る全期間を通じて必要とされ、その後はセキュリティが侵害されることのないように削除されます。

IoTデバイスのゼロタッチ接続を実現する方法

それでは、数千ものIoTデバイスに対して、どうすれば迅速かつコスト効率よくRoTベースのゼロタッチプロビジョニングを実現できるのでしょうか。その答えは、製品の開発時および製造時にRoTのシーディングを管理するとともに、IoTネットワークに関わるすべての関係者に対して、製品のライフサイクル全般を通じて「セキュアキー」インフラストラクチャを管理するシステムにあります。これを実現するのがSecure Deployです。

IARは、IoTデバイスのファームウェアがまだ開発段階にある当初から柔軟なRoTを定義する機能を提供します。これには、組込みSIMなどの接続オプションのサポートも含まれています。Embedded Trustのツールを使用すれば、IoTデバイスの要件に応じて様々な目的でRoTを定義することができます。

次の段階であるデバイス生産時には、Secure Deployなどのツールを使用して、このRoTを数百万単位のデバイスにシードできるほか、セルラー方式および非セルラー方式のネットワークに必要な認証情報のプロビジョニングを行うこともできます。また、RoTに基づいて現場で認証情報のプロビジョニングを行うことも可能です。RoTの初期化は、Secure Deployが提供する暗号鍵によって行われます。