組込み機器の機能安全
組込みシステムの複雑化に伴い、機能安全の重要性はますます高まっています。しかし、機能安全規格に準拠した組込みシステムのアプリケーション設計は、規格認証の点で多くの時間とコストを要します。
IARの組込みシステム向け機能安全版ツールは、業界で最も広範な機能安全の10規格に基づいた認証を取得しており、異なるアーキテクチャごとにツールを提供しています。これにより、最終アプリケーションのツール認定における機能安全規格認証手続きの煩雑さを軽減します。
IARシステムズは、FSEG(機能安全エキスパートチーム)の一員として、機能安全に関する資料の提供や、個別相談会の実施、また「15分でわかる!機能安全対応コンパイラのご紹介」などのウェビナーも公開しています。
組込み機器の機能安全とは
機能安全とは、一言で言うと、リスクを完全にゼロにできないもしくはリスクゼロであることを証明できないような組込み製品に関しても、社会が許容できるリスクレベルまでリスクを抑えることです。
これによりメーカー、ユーザー、社会に大きなメリットを与えることができます。
例えば、安全に関わるような組込みシステムにおいては、ハードウェア制御でのみ安全を担保することが従来のやり方でしたが、ソフトウェア制御をしながらより効率的に安全を担保することも可能になります。
組込みシステムの複雑化に伴い、機能安全の重要性はますます高まっています。
機能安全認証取得においては、組込み製品の安全性の証明だけでなく、信頼性の証明も必要となる点が特徴的です。信頼性の担保として特徴的な一例は、ユーザー自身が利用ツールの妥当性証明を求められることです。
例えば、機能安全開発において組込みコンパイラを利用する際には、
そのツールが機能安全規格に準拠していることや、ツールの信頼性証明をユーザー側へ求められる場合がありますが、それらをユーザー側が行うことは現実的ではありません。
よって、既に認証済みの組込み開発ツール(コンパイラなど)を選択すれば、こうした工数やコストを大幅に削減することができるのです。
TÜV SÜDによる認証:これが意味することは?
弊社の組込みシステム向け機能安全版ツールは、安全性の公認認証機関であるTÜV SÜDによる認証を取得済みであり、下の表中に記載した10種の規格に従って安全関連のアプリケーション開発に利用できるツールの妥当性(ツール認定)が証明されています。
IAR Embedded Workbench機能安全版を開発ツールとして選択することで、お客様自身でツールの開発プロセスを評価する必要がなくなり、独自にテストを実施して言語規格への準拠を示す必要もなくなります。このことは、既にTÜV SÜDによって証明済みであるからです。IAR Build Tools for Linux機能安全版についても同様です。
認証の付与は、IARシステムズがソフトウェアをどのように開発、テスト、サポートするのかを綿密に評価した上で行われました。
広範な機能安全規格対応
アプリケーションの種々の要求に合わせて、異なるアーキテクチャ毎に組込みシステムの機能安全ツールバージョンを提供しています。
規格の詳細
IEC 61508
IEC 61508は、機能安全に関わる国際的包括規格です。この規格および派生規格は、信頼性と安全性に関する要件を有する各種産業、たとえば、プロセス産業、石油・ガス産業、原子力発電所、機械、鉄道管理システムなどで使用されます。
ISO 26262
ISO 26262は自動車の安全関連システムに適用されます。
EN 50128およびEN 50657
EN 50128およびEN 50657は、鉄道アプリケーションの安全関連ソフトウェア向けヨーロッパ規格です。IEC 61508の派生規格です。
IEC 62304
国際規格IEC 62304は、医療ソフトウェアおよび医療用機器に実装されるソフトウェアの開発においてライフサイクル要件を規定する規格です。
ISO 25119
IEC 61508の分野別運用規格で、農林業用のトラクタや機械に関する安全要件です。ISO 25119-3は「開発中に起こりうる、トランスレータエラーに起因するいかなる問題も回避するために、使用実績で証明されたツールとトランスレータを適用すること」と規定しています。
IEC 62061
IEC 61508から派生した分野別(安全に関連する機械の電気的制御システム)規格で、機械のアプリケーション向けに安全関連の電気的制御システムを設計、統合、検証する際の要件を規定しています。
EN ISO 13849-1
機械関連の安全規格(IEC 62061と同様)で、電気部品、電気機械部品、機械(油圧)部品が主な対象です。ソフトウェアの設計を含む、制御システムの安全関連部品(SRP/CS)を設計および統合するための安全要件を規定しています。
IEC 61511-1
IEC 61508から派生した分野別(プロセス産業)規格です。この規格は、FPL (固定プログラム言語)またはLVL (制約可変言語)を使って開発されたアプリケーションソフトウェアのみに適用されます。
IEC 60730-1
この規格は、家電などの機器の内部、外部、またはそれらの製品に関連して使用される電気的自動制御に適用されます。ソフトウェアに関する要件は、IEC 61508-3から抜粋されたものが本規格に合わせて変更されています。
必要な限り有効なサポートとメンテナンスを提供
組込みシステムの機能安全向け保守契約(SUA)がある限り・・・
お客様のアプリケーションが、製品の全ライフサイクルにわたって整合性を保ち安全であり続けるためには、信頼できるツールチェーンが必要です。IAR Embedded WorkbenchおよびIAR Build Tools for Linuxの、組込みシステム向け機能安全版は、機能安全の保守契約を利用いただくことで、販売済みのバージョンに対して契約期間中、保証付きサポートを提供します。
また、固定バージョンでもツールが提供され、検証されたサービスパックを通じてのみ更新が行われます。
アプリケーションの検証をさらに簡素化するために、バージョン毎に機能安全証明書、TÜV SÜDによるセーフティレポートが提供されます。また、付属の安全ガイドには、アプリケーションの認証に実際に役立つヒントが記載されており、機能安全のコンテキストにおけるツールの詳しい使用法をはじめ、ライブラリやC/C++プログラミング言語の推奨事項が記載されています。
固定バージョンでは、お客様とのサポートおよびアップデート契約が有効な限り、機能安全証明書が更新されます。
機能安全認証済み組込みシステム開発ツール
IARシステムズの組込みシステム開発ツール機能安全版は、機能安全に関わる国際的包括規格であるIEC 61508と、自動車の安全関連システム用のISO 26262の要件に従い、TÜV SÜDの認証を取得しています。 また、この認証は、医療用ソフトウェアの国際規格であるIEC 62304と、ヨーロッパ鉄道規格EN 50128およびEN 50657にも対応しています。ArmとRISC-V向け製品は、IEC 60730, ISO 13849, IEC 62061, IEC 61511 とISO 25119に対応しています。
統合開発環境
CI/CDなどワークフローの自動化を実現するビルドツール
組込みシステムの機能安全に関するFAQ
弊社の提供する組込みシステムの機能安全に関する“よくある質問(FAQ)と答え”については、こちらをご覧ください。
IAR Embedded Workbenchの機能安全版とは?
IAR Embedded WorkbenchおよびIAR Build Tools for Linuxの機能安全版は、組込みソフトウェア開発のために高信頼性規格IEC 61508、ISO 26262、EN 50128、EN 50657、IEC 62304に基づきTÜV SÜDによる認証を受けたツールチェーンが含まれている特別な製品およびサービスパッケージです。また、ArmとRISC-Vの機能安全版では、IEC 60730、ISO 13849、IEC 62061、IEC 61511、ISO 25119にも対応しています。特別な保守契約(SUA)をご利用のお客様は、お使いのフローズンバージョンについても、契約が続く限りサポートとアップデートを受けることができます。認証はツールチェーンのバージョンごとに付与されるもので、各機能のリリースごとに与えられるものではありません。
IAR Embedded Workbenchの認証版を購入すべき理由は?
今日の高信頼性に関する基準では、開発ツールが認証済みでない限り、その開発ツールを選択した正当な理由を詳しく示すよう求められるのが通常です。
認証済みとは?
その機能安全版が、前述した規格に基づいて、安全関連のアプリケーションを開発するためのツールとして認証されていることを意味します。IAR Embedded Workbench機能安全版を組込みシステム開発ツールとして選択することで、お客様自身でツールの開発プロセスを評価する必要がなくなり、独自にテストを実施して言語規格への準拠を示す必要もなくなります。これは、IAR Embedded Workbench機能安全版が既にTÜV SÜDによって証明済みであるからです。
IARシステムズがソフトウェアをどのように開発、テスト、サポートするのかが綿密に評価され、認証の付与が進められました。
IAR Embedded Workbench機能安全版はどの(A)SILまで認証済みですか?
TÜVの認証レポートでは、以下のように報告されています。
「EWNNFSのビルドツールチェーンは、ASILのすべてのレベルにおいてISO 26262:2011に準拠しており、安全関連の開発プロジェクトでの使用に適しています。すなわち、ソフトウェアツールが[ISO26262-8, Chapter] 11.4.9に基づき検証済みで、ツール開発プロセスが[ISO26262-8, Chapter] 11.4.8により評価されており、機能安全版としての要件を満たしています。」
レポートはさらに、
「IEC 61508-4:2010に基づきオフライン型T3ツールと認定されたEWARMFSビルドツールチェーンは、SILのすべてのレベルにおいてIEC 61508:2010に準拠しており、安全関連の開発プロジェクトでの使用に適しています」と報告しています。
ツールユーザ自身でそれぞれの安全機能に対して独自に結論を出していただくために、具体的な(A)SILレベルについては、あえて明確な言及はしていません。
使いたい規格がカバーされていない場合でも認定済みバージョンを使うメリットはありますか?
はい。分野別規格の多くはIEC61508から派生しており、ツールの品質要件は互いに似ています。規格によっては、追加情報が必要になるかもしれませんが、そのような場合は、弊社より必要な情報を提供いたします。さらに、特別な保守契約(SUA)によるサービス(下記参照)は、エンドプロダクトの品質と信頼性が最優先されるプロジェクトにおいては非常に有用です。
機能安全版の製品と標準的な製品には、どのような違いがありますか?
機能安全版は3本の柱で支えられています。
- IAR Embedded Workbenchの特別な認定版。機能の新規追加はなく、不具合修正および注意を要する問題のみを通知するアップデートが行われます。
- 特別な保守契約(SUA)。詳細は下記参照。
- 証明書および証明書に関する報告書などの認証ドキュメント。ドキュメントパッケージにはこの他に、機能安全に関してツールチェーンの使用法を説明したセーフティガイドが含まれています。
機能安全の特別な保守契約(SUA)には何が含まれますか?
- 所有する認定版に対するサポートとアップデートの契約です。この契約には、既知の問題に対する修正と問題の報告のみを含む、特別に有効なサービスリリースが含まれます。IARシステムズは、保守契約の有効な認定版をお持ちのお客様がいらっしゃる限り、該当バージョンをサポートいたします。
- 優先サポート
- 安全関連の開発に必要な追加ドキュメント
特別なサポートは価格に含まれていますか?
はい。購入後1年間、機能安全の保守契約(SUA)が有効です。
認定を取得しているのはツールチェーンのどの機能ですか?
ビルドツールチェーン全体とその全機能について、認証を取得しています。これには、最適化、言語拡張、組込み関数などの機能が含まれています。しかし、安全関連の規格では制約が付加されたり、機能を使用するうえで更なる妥当性が求められる場合がしばしばあります。求められる妥当性の程度や制限は、プロジェクトの安全度水準や規格によって異なります。そのような機能の使用法については、セーフティガイドに記載されています。
パートナーの機能安全ソリューション
組込み業界における長年の実績により、私たちは数社のベンダによる多くのソリューションに対してサポートを提供しています。
AUTOSAR Microcontroller Abstraction Layer (MCAL) に対応
弊社の半導体パートナーから多数のMCALドライバが提供されていますが、現在、弊社パートナーのMCALドライバによって、以下のMCUデバイスがサポートされており、IAR Embedded Workbench for Armが対応しています。
MICROSARに対応
MICROSARは、AUTOSARのECU (electronic control unit) ソフトウェア用ソリューションです。MICROSARは、ランタイム環境MICROSAR.RTEとMICROSARのベーシックソフトウェアモジュール (BSW) で構成されます。Vector Informatikから、MICROSAR OSとMICROSARモジュールが提供されており、ArmおよびルネサスのRH50、V850、RL78他向けのIAR Embedded Workbenchが対応しています。
STM8およびSTM32の機能安全パッケージに対応
STは、STM8およびSTM32 MCUベースの認証済み機能安全パッケージの包括的なセットを無料で提供しています。STの機能安全ライブラリはすべて、IAR Embedded Workbench for ArmとIAR Embedded Workbench for STM8に対して互換性を有し、テスト済み、認証済みです。
ルネサス RX、およびルネサスRA向けの産業用オートメーションソリューション
ルネサスは、IEC61508のSIL認証に準拠したソフトウェア技術、機能安全システムを構築するためのリファレンスハードウェアボード、IEC61508のガイドブックとしてのリファレンスドキュメントを提供し、これらをIARシステムズの認定コンパイラでサポートすることで、安全な開発を実現する「ルネサス機能安全ソリューション」を提供しています。
ルネサスRXファミリーとIAR C/C++コンパイラとの組み合わせに関する質問については、ルネサスにお問い合わせください。
お問い合わせ
機能安全に関するお問い合わせはこちらへメールでお送りください。