オスラム
使い易いIDEと優れたコードサイズ最適化機能
光源の品質と光強度の制御は、画像の色再生、明るさ、コントラストにとって極めて重要です。オスラムは数多くの照明ソリューションを手掛けていますが、中でも、最適化されたドライバ(いわゆるバラスト)を備えた高輝度放電(HID)ランプやLEDを使用した家庭用、業務用ビデオアプリケーション向けの光源システムを提供しています。HIDランプとUNISHAPE™機能を備えた強力なドライバという最高の組み合わせにより、マイクロ秒単位の光強度制御を実現しています。
オスラムは、シーメンス社(Siemens AG)から分社化された企業でミュンヘンに本社を置く世界の2大照明メーカの1社です。
オスラムのランプバラストシステムは、(1) HIDランプ (2) ドライバハードウェア (3) ドライバソフトウェアの3つから構成されています。システムが顧客のビデオプロジェクタに採用されるには、以下のような厳格な機能要件を満たす必要があります。
- ランプの光は、できる限り完全な白色であること
- 鮮明な色や明るさなどを表現できるよう画像を最適化するために、回転するカラーホイールのセグメントに合わせて光の強度を高速で調整できること
- 動作はDLP(Digital Light Processing)チップと同期すること
色表現や明るさの最適化
カラーホイールを使用したランプ動作の補正には、ソフトウェアパラメータが使われ、任意の結果を念頭に置きながら補正を行うことが可能です。
Baierは次のように語っています。「ビデオプロジェクタは、最良の色表現や、画像の最大明度が得られるように最適化することが可能です。オスラムの顧客のほとんどは、プロジェクタのメニューに複数の設定を設けており、エンドユーザが設定を選択できるようにしています。」
ランプの明るさ調整は、カラーホイールが1つのカラーセグメントから次のカラーセグメントに変わるまでのわずかな時間内に完了させる必要があります。画像が歪まないように、1つのカラーセグメントに光が当たったときに光の強度が適切なレベルに達していなければならず、そのセグメントが終わるまで同じレベルを維持する必要があります。
高輝度放電(HID)ランプは効率的な光源で、発光効率は1ワットあたり約75ルーメン(75lm/W)です。これに対し、一般の電球の発光効率は10lm/W未満です。
ランプドライバは、ランプの明るさ、電力、電極リフレッシュ方式などを継続的に制御することによって光源を操作したり、10kV以下のパルスを使って最初にランプ内のガス中で放電を発生させる際に必要となります。ランプドライバのハードウェアとソフトウェアは、素早い動作と厳密なタイミングを実現できるように開発されます。光強度の修正は10~15マイクロ秒で行う必要があります。ソフトウェアのプログラミングにはC言語が使われています。
「これらのドライバの第一世代ではアセンブラを使っていましたが、制御メカニズムが複雑化し、移植性も重視されるようになったため、Cに移行しました。C言語のほうがソフトウェア開発の管理が容易だからです。」
IAR Embedded Workbench for AVRを使用
ハードウェアはAtmel AVRマイクロコントローラをベースとしています。オスラムは照明およびモータを制御するために開発されたマイクロコントローラを使用し、ソフトウェア開発にはIAR Embedded Workbench for AVRを使用しています。ソフトウェアの個々の部分は、関連する項目に応じてサイズや速度を基に最適化されます。
IAR Embedded Workbenchによる最適化は非常に優れています。アセンブラコードを検証すると、手書きのコードより優れたコードになっていることが分かります。また、IAR Embedded Workbenchで作成したコードのサイズは、競合他社のツールで作成したコードより小さく、さらにIDEが非常に使い易いのも有難い点です。 - Baier |
MISRA Cを使用したソフトウェア品質の向上
「オスラムは、ソフトウェアが製品全体の品質に果たす役割を年を追うごとに強く意識するようになっています」とBaierは語ります。同社は毎月20万個のHIDランプバラストシステムを販売していますが、万一、製品のハードウェアやソフトウェアに欠陥があれば、重大な結果を招くことになります。
ソフトウェア開発時、Baierは品質向上のためにMISRA Cのコーディングガイドラインに従うとともに、IAR Embedded WorkbenchのMISRA Cチェッカをオンにしています。
「規則から外れると、チェッカがそのことを教えてくれます。その際、コードを変更するか否かを自分で決めることができます。MISRA CチェッカはIAR Embedded Workbenchに緊密に統合化されているため、効率よく使用できます。」
Baierによれば、将来的にはより強力なビデオプロジェクタや、さらに寿命の長いHIDランプが実現する見込みです。現時点では、HIDランプは、どの程度の予想寿命に達しているかに応じて異なる使われ方をしています。また、電極の設計と製造方法も重視すべき部分で、寿命の長い製品を設計する場合は、これらの点を考慮に入れる必要があります。現在HIDランプの標準寿命は最大で約6,000時間と非常に優れていますが、これまでに述べてきた技術などにより、将来的にはこれを上回る寿命が実現すると期待されています。